下北半島のサル調査会

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氷河時代の下北半島のニホンザル
江戸時代末期〜大正時代(1923年以前)のニホンザルの分布
終戦後〜高度成長期(1945年〜1960年)のニホンザルの分布
1960年以降〜1999年までのニホンザルの分布


氷河時代の下北半島のニホンザル

氷河時代の下北半島ニホンザルの祖先は、中国大陸から朝鮮半島を経由して日本列島へやってきた。北のシベリアからカムチャッカ半島−北海道という経由ではなかったようだ。時期は今から約30〜40万年前、ミュンデル−リス間氷期に、遅くともリス氷期に渡来したものと考えられている(※1)。
渡来後、下北半島まで分布を広げたことは間違いない。その後、リス氷期、リス−ヴィルム間氷期を経て、再びヴィルム氷期をむかえる。尻屋崎の、およそ2万年前の更新世後期(最終氷期最盛期)の地層からニホンザルのオトナのメスの右下顎犬歯1本、性別不明の右下顎第1大臼歯1本が発見されている。オトナのメスがいたということは、当時、下北半島に繁殖集団としての群れがいたと考えてよい。これが現在確認できる、下北半島で最も古いニホンザルの骨である。
 このニホンザルの古骨の出土を報じる資料(※2)によれば、同じ地層から、サル以外の動物の化石が出土していて、それらのほとんどは現在と変わらない動物たち(貝類やネズミなど齧歯類)であることから、その地層があらわす気候が現在とあまり変わらなかったのではないか、としている。
 サルたちが、約7万2000前からはじまる最終氷期以降を始終下北半島に踏みとどまりえたかどうかは現在のところ不明であるが、その間においても亜氷期、亜間氷期が繰り返されていたのである。彼らの寒冷地生活能力から想像すると、ヴィルム氷期の極大期においても、われわれが想像する以上に高緯度にとどまっていた可能性があり、ニホンザルの祖先がこの下北半島周辺の地で生息していたということも現実味がないことではない。以降、暖かくなる後氷期から現在までその子孫が生き延びてきた可能性もでてくる。
氷河期とニホンザルをめぐる問題は、その寒冷地適応能力を筆頭にほとんど解明されていない。ともあれ、こうした問題を解き明かすカギを握っているのは、現に下北半島に生息するニホンザルたちである。(図は最終氷期時の津軽海峡)


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