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手始めに、屋久島集団と大平山集団の0歳から18歳までのさまざまな年齢のサルたち(屋久島23頭、大平山30頭)のクー・コールを録音して、その声の長さや周波数の高さ、抑揚の幅などさまざまな特徴を比較しました。そうすると、大平山のサルたちのほうが、屋久島のサルたちよりも、低い声で鳴いているという結果が得られました。もちろん、人間とおなじように声の基本的な高さは成長とともに変化し、だんだん低い声になります。この結果からも、年齢が高くなるにしたがい声は低くなるという傾向は、どちらの集団でもみられました。しかし、そのような成長にともなう声の高さの影響を考慮しても、どの年齢層でも一貫して大平山集団のほうが屋久島集団よりも低い声で鳴いていたのです。この違いは、遺伝的な違いであるとは考えにくく、学習をとおして形成された方言である可能性が高いと考えられます。 0歳から18歳までどの年齢でも一貫して屋久島集団と大平山集団で声の高さに差がみられましたが、この比較の方法は、短期間にさまざまな年齢層の音声を比べて年齢による変化を推定するという横断的な方法なので、個体差などの影響を受けやすいのです。そこで次に、より精度をあげるため、同一個体の発達を長期間追跡しても同じ結果が得られるかどうか縦断的な比較をおこないました。大平山と屋久島の0歳の赤ちゃん各4頭ずつを対象とし、4年間にわたってクー・コールの音響的特徴を追跡しました。その結果、どちらの集団の個体も年齢が高くなるにしたがい声は低くなりましたが、どの年齢でも一貫して大平山集団の個体ほうが屋久島集団の個体よりも低い声で鳴くようになりました。前回の横断的な観察と同じ結果が、縦断的な観察においても得られました。どうやら、大平山集団と屋久島集団の間には方言があるようです。 ![]() 次のページへ 最初のページへ |
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