![]() |
![]() |
|
さて、この方言の音響的特徴は発達段階のいつごろ学習されるのでしょうか?これまで行った横断的および縦断的な比較では、もうすでに0歳の時点で集団差が生じていました(正確には大平山の生後9ヶ月と屋久島の生後7ヶ月の比較)。このことから、方言が学習される時期を明らかにするには、もっとはやい発達段階も観察する必要があることが分かりました。そこで今度は、新たに屋久島と大平山の赤ちゃん6頭ずつを対象に選んで、生後4〜5ヶ月、生後7〜8ヶ月、生後9〜11ヶ月の三期間でクー・コールを比べてみました。そうすると、生後4〜5ヶ月の比較では声の高さにちがいは見られませんでしたが、生後7〜8ヶ月、生後9〜11ヶ月では、大平山の赤ちゃんのほうが屋久島の赤ちゃんより低い声で鳴くようになることが分かりリました。生後4〜5ヶ月までは、まだ母親や周りの仲間から方言の特徴を学習しておらず、マイペースで鳴いているのでしょう。その後、生後6ヶ月を過ぎると学習が起こり、それぞれの集団に特徴的な方言を身につけるようです。ニホンザルにとって生後6ヶ月頃というのは、ちょうど離乳の始まりの時期です。それまで文字通りお母さんにおんぶに抱っこだったのが、この頃からお母さんのもとからひんぱんに離れるようになるのです。そんな時期に、視界の利かない森の中で、群れの仲間同士で声によるコンタクトを保つはたらきをしているクー・コールという音声の音響的な特徴を学習により変化させるのです。方言の中身はさておき、大枠では、ヒトもサルも方言を学習により身につけるという点で進化的に連続していると言えそうです。 以上、サルにも方言があるというお話でした。 サルの手をクリックしてください。クーコールが聞けます。 |
当ホームページの全ての著作、写真、イラスト等には著作権が存在します。全ての無断転載を禁じます。 |