下北つれづれ(8)-シナノキのはなし

●樹木図鑑的知識
シナノキは正式な和名です。この木はシナノキ科( Tiliaceae )シナノキ属( Tilia )に分類され、学名を「 Tilia japonica Shimonkai 」といいます。属名の(
Tilia )は「ボダイジュ」を意味するラテン古名ですが、語源はptilon(翼)であると言われています。語源の「翼」をイメージさせるのが花柄(かへい)の中ほどに癒着している包葉(ほうよう)と呼ばれるものです。種小名の(japonica)は「日本の」であり、日本固有を意味します。和名でボダイジュ(Tilia Miqueliana)といわれる木は中国原産の木です。ヨーロッパやアメリカなどにはセイヨウシナノキ(セイヨウボダイジュ)(Tilia europaea L.)があり、ドイツ語ではリンデンバム(Lindenbaum)、アメリカではリンデン(linden)と呼ばれているそうです。ちなみにセイヨウシナノキはナツボダイジュ(T.
platyphyllos Scop)とフユボダイジュ(T. cordata Mill)との雑種(自然交配種)だそうです。
シナノキ(別名:アカジナ)は高さ15〜20mくらいの日本特産の木で、北海道から本州、四国、九州、対馬、中国東部等温帯に生育しているそうです。花の時期は夏で、ゆがんだ心形をした葉のわきから垂れ下るように淡い黄緑色の集散花序(小さな花の集合体)をつけます。花序を構成する小さな花は数えれば40個くらいあるようです。下北半島(本州中部以北・北海道に分布)ではこの木のほかに、とても良く似たオオバボダイジュ(別名:アオジナ)(Tilia Maximowicziana)という木もあります。こちらのほうは葉の裏面に薄茶色の星状毛(倍率の高いルーペで星の形が見える)が密生していることで区別が付きます。実際に下北の山を歩いて感じることですが、オオバボダイジュはたまにしかお目にかかりません。手に届く枝の葉を親指と人差し指の間に挟んで軽く擦ってみたり、裏返しにしてみたりしてどちらの木であるかを確かめます。
●名前の由来
和名である「シナノキ」の由来を探ると@シナはアイヌ語の「結ぶ、縛る」の意味、A樹皮がシナシナすることから、B樹皮が白いことからシロの転などがあります。漢名には「?(木に品と書く)木」や「科ノ木」が用いられているようです。
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