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●わたしたちの生活とのかかわり
材の特徴と多様な用途についても興味深いものがあります。木部は緻密で細工しやすく、軽くて均質、素直だが強度は弱いけど断熱効果が高いといわれます。植栽の目的では街路樹、景観樹、緑陰として利用されています。北海道土産の熊の木彫りは、ほとんどがシナノキを使っているそうです。マッチの軸、アイスクリームのヘラ、アイスキャンデーの棒、割り箸(木質部がサンショウに似た香りがする)、引き出し、楽器、経木、合板。特に、合板は音楽のリスニングルームに張ると音がまろやかになるといいます。クラッシックを聞くのにはシナ合板の壁でできた部屋がいといわれています。一方、ジャズはコンクリートの地下室などが良いそうです。 ●青森・下北半島とシナノキ 青森の三内丸山遺跡の縄文人もシナノキを利用していたようです。衣類には編み製品と皮製品がありますが、編み製品の素材にシナノキ(他にイグサ、フジ、クズなど)を使い、その技術は高度なものであったと推察されています。縄文人は樹皮の繊維で上質な強い縄や肌触りが良くて長持ちする布を作っていたのでしょう。また、様々な縄を作り、それを粘土のうえに転がして縄文土器の模様を付けたといわれます。実際に転がしてみると意外な模様ができあがるそうです。シナノキの利用においてアイヌ文化と縄文文化はとても共通している点があるそうです。 ●シナノキの記憶 シナノキでいくつか思い出すことがあります。音楽では、シューベルトの「冬の旅」 の中にある歌曲「菩提樹(これもセイヨウシナノキといわれる)」としても有名です。そういえば、中学校のときに「リン、デン、バム・・・」という歌詞を歌わされたような記憶があります。ドイツで製作された「菩提樹」という映画(1957年製作)は原題を『Die Trapp Familie』といい、オーストリアから亡命、米国に移住するまでのトラップ男爵一家のお話です。ナチスドイツから逃れてアメリカの港に向かいますが、ここで入港を拒否されたときにトラップ家が歌った歌が「菩提樹」だったのだそうです。さらに、このお話を基にして作られた映画「サウンド・オブ・ミュージック」はわたしも観ましたが、音楽祭でトラップ家が歌った歌は「エーデルワイス」でした。映画の中でセイヨウシナノキらしき木がどこかに登場したかどうかは全く覚えていません。今度、いずれかの映画を見観るときはシーンのなかに出てくる木を良くみてみようと思います。 ●結論 このようにシナノキについて調べてみると、わたしたちの生活のなかで、古代から知らず知らずのうちにお世話になっている木であることが分かりました。わたしが思うに、「ゆがんだハート」の形をした葉ではありますが、実は「白くておとなしい性格」の持ち主であり、みんなが頼れるしっかりものだとあらためて好感をもちました。そんなわけで、山の中で大きなシナノキに出会ったら、是非、話しかけてみようと思うのです。 文責:鈴木邦彦 参考資料 NHKテレビ番組、クローズアップ東北(2004年2月27日放送) |
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