下北半島のサル調査会

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下北つれづれ(6)-ミズバショウの不思議と環境

 「夏が来れば想い出す、遥かな尾瀬、遠い空…」の唄(夏の想い出)にイメージされるミズバショウは下北地方では早春を代表する花です。雪が溶けて間もない頃はとても清楚で初々しく見えるものです。ミズバショウについて探ってみましょう。

 ミズバショウはサトイモ科でミズバショウ属の草本です。白い花びらのような部分は「仏炎苞(ぶつえんほう)」と呼ばれ葉の変形したものです。中央のキリタンポのようなものは小さな花の集まりで「肉穂花序(にくすいかじょ)」と呼ばれています。花といってもメシベとオシベだけで花びらはありません。北海道では「ベコノシタ」と呼ばれるそうです。図鑑によれば分布の南限は兵庫県で北はロシア(サハリン、千島列島、シベリア東北部)におよびます。学名(Lysichiton camtschatcense)(ラテン語)の属名の部分は「分離(lysis)と衣服(chiton)」の合成語だそうです。そう言えば仏炎苞が女性のブラウスのはぎれのようにも見えたりします。種小名(camtschatcense )は 「カムチャッカの」という意味です。和名の由来は水辺に生え、芭蕉のように大きな葉になることのようです。ミズバショウは有毒植物のひとつですが、海芋(カイワ)という生薬として、その根茎が用いられるそうです。便秘、発汗、痔などに効くのだそうです。動物では ツキノワグマが若葉や肉穂花序を食べると言う報告もあります。実際、わたしも恐山周辺で春先は仏炎苞が開く前の先端部分を、また夏の時期には果実を何者かに食べられた跡を見ています。

ミズバショウーメスの時期 実はこの植物、最初はメスを装って、後でオス化するのだそうです。研究者の間ではメスの性表現期とオスの性表現期という言葉を使っているようです。仏炎苞が開いたばかりの頃に初々しい緑色をした花序のところに虫眼鏡を近づけてよく見てみました。キリタンポのような形と表現しましたが、この頃はむしろ新鮮なキュウリ(イボイボが着いている)と言った方が適切かもしれません。このイボのひとつひとつが周囲の緑色の組織(4枚の板状に見えるもの)を下から押し上げ、突き破ってでてきたように見える透明感のあるメシベなのです。これがメスの性表現期だそうです。そして数日後にはメシベのすぐ脇(板状に見える組織との隙間)から黄色い花粉を着けた4本のオシベが伸び出てきます。さらにメシベは突出しますが先端は枯れているようです。この頃がオスの性表現期でしょう。 ミズバショウは両方の性が楽しめて羨ましいようにも思います。もし人間もそうであるならば、電話で「あなたは今、女性ですか、それとも男性ですか?」「わたしは丁度、変わり目です」などと会話が交わされるのかもしれません。研究者(藤高照也氏(東北大学))の話しではミズバショウが時期をずらして異なった性表現をするのは他の花からの受粉効率を高めるためだそうです。健康な子孫を残すための仕組みというわけです。

ミズバショウーオスの時期

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