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フキノトウを食の面から見てみましょう。フキノトウは春の味覚として下北地方でも天ぷらにしたり、味噌和えにして食べますが、オスのフキノトウとメスのフキノトウで味がどう違うのかは、地元の人に聞いても分からないと言われてしまいます。男性が食べればメスのほうが美味しい、女性が食べればオスが美味しいとなるのかもしれません。フキという植物自体、ワラビと同様に発ガン性物質(petasitenin)を含んでいるそうです。あく抜きや塩漬けなどの処理で消滅するので特に心配はいらないそうです。それに発ガン性物質は地下茎に多く含まれ、食用にする地上部は含有量が少ないと言われます。実はこの地下茎も漢方では咳き止めや解毒に使われるそうです。フキは日本特産野菜の中で最古の野菜として江戸時代に書かれた「農学全書」に登場することでも知られています。 下北半島のニホンザルやニホンカモシカもフキノトウを食べます。採食の様子や食痕を注意深く観察するとサルは特に花茎を好んで食べているのが分かります。花茎が伸びるまえはラッキョウの皮をむくようにりん片を外して食べています。また、花茎が伸びたものは根元あたりからちぎり取り、片方の端を片手で持ち、もう一方の手で花茎をしごくような動作で上手ににりん片をこそぎ落とします。最後に両手で花茎を裂くようにして内側を食べているように見えます。薬研渓谷の林道を歩いていてフキノトウの新しい食痕を見つけた時は道沿いに一キロ以上も食痕が続いていて群れの発見につながりました。カモシカは若いフキノトウがお好みの様子で、真上からガブリと一口で食べてしまうようです。食痕にはりん片はあまり残っていません。また、裂かれた花茎もないので大抵の場合サルのものと区別することができます。 ところで、北海道のお土産として有名なホワイトチョコレート(発売元は六花亭)があります。包装紙は白地にフキノトウが描かれています。白はチョコレートにたっぷり含まれる新鮮なミルクであり北海道の春の残雪を意味します。そこから初々しく顔をだしたフキノトウはまさしく北海道から初デビューしたチョコレートのイメージを象徴したものです。わたしも何度か食べましたが、あの包装紙に描かれたフキノトウは果たしてオスであったかメスであったか考えてみたこともありませんでした。今度、誰かから頂くのを心待ちにしています。 こんなふうに、ありふれたフキノトウですが、いろいろ探ってみると知らないことでいっぱいでした。今度、道端などでフキノトウを見たときにはもっと親しみを持って見られるような気がします。みなさんも春が終わる前にフキノトウを見てあげてください。メスのフキノトウは受粉後、ぐんぐんと薹が延びて、風を待ち、やがて大空に向けて種を飛ばします。一方、オスは花期が終わると、みすぼらしくしおれて倒れてしまいます。その頃には、おなじみのフキの葉が茂りだすことでしょう。 文章・写真:鈴木邦彦 参考文献 |
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