下北半島のサル調査会

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 海が青かった、空が青かった。
ここは宮城県牡鹿町の鮎川港、集合時間に遅れてしまった僕は一人で船に乗り込んだ。早朝からの運転で眠かった目には、波の輝きが眩しかった。目の前に見える島、あれが金華山かと期待に胸膨らませていた、にもかかわらず一向に近づかない、それどころか進路が変わっている。乗る船を間違えたかと、一抹の不安…。気を取り直し船の前方を見ていると、新たな島が見えてきた。あれこそ本当に「金華山」だ!!
島の周囲はおよそ26km、標高は445m、接岸した船を待っていてくれたのは、たくさんのカモメと2頭のシカ。残念ながら(?)サルのお出迎えはなかった。ま、ホイホイと人前に出てくるサルもどうかと思い、宿泊場所である調査小屋に向かった。少し山に登り始めると沢の対岸になにやら動くものが!!シカにしては小さい、そう「サル」だ。
 金華山のサル、やや小さめ?ちょとこちらを警戒しているらしく、食べている手を休めた。こちらも近寄ることなく、その場で汗を拭って見ていると、あちこちにサル達が見えてきた。後で聞いてみると、食べていたのはレモンエゴマの実だった様だ(写真)。

 しばらく初対面の時間を楽しんでいたが、遅刻していたので、足を進めた。日頃の運動不足が祟って、小屋に着く頃にはシャツの背中が濡れていた。小屋は想像よりも立派で、などと言ったら今回の観察会の主催者宮城教育大学の伊澤紘生さんに叱られるかもしれませんが…。木立ちに囲まれ、典型的な調査小屋、なかなか良い感じ!!荷物を下ろし、早速山へサルを捜しに出かけた。
 最初から斜面でちょっと息切れ、もうすぐ峠に到着、と思って見上げた稜線の右前方から視線を感じた。角が2本雄ジカだ。先程港の近くで見たシカとは一味違う、野生のシカ。やはりこっちを気にしながら、稜線を越えて消えていった。峠からは青い海とその向こうに、本州が見えた。金華山に来てから感じていた、違和感。何だろう?樹は在るし、特別珍しい木が在るわけでもなし。林床の植物の違い。針葉樹の林の中で下に草が少ないことは、これまでも経験があったが、広葉樹の林で見通しが良過ぎるのは、何か変だ、ちょっと何とか庭園みたいで。シカによる草刈りが行われた結果のようだ。草以外にも、若い木の新芽や若葉も食べられているらしく、大木がある代わりに、若い木が目立たない。林の高齢化?、将来的には何もなくなってしまうのでは、と心配になる。
歩いている間に、登りでくたびれた僕は、杖代わりに落ちていた枝を拾った。これを突いていると、なんだか響いた。下に空間がある舞台の上でも叩いているように。これは、金華山の地質のせいだろうか。岩でできた島の上に、土が乗っているのだろう。これだと、砂も流れやすく、大雨などで地盤が緩むと、大木も耐え切れないのではないかと思われた。
さて足を先に進め、二ノ峠〜山頂〜山神社〜仁王峠と越えていった。少し日が傾いて、夕方のような陽射しになりつつあった14:30頃、前方のガマズミの上で風に揺れていた、大きな灰褐色のものが揺れていた、サルが揺れていた。大きく感じられたのは相対的に大きいもので、よく見るとガマズミの木が小さかったのだ。熱心に赤い実を口に運んでいた、足元にあったサルフンの中にも、その種が一杯だった。人馴れしていないと聞いていたので、そっと近づいて行ったが、こちらの動きに気がついた瞬間移動を開始した。
追いかける、逃げる、追いかける、逃げる、そして崖を下りて海岸の岩場へと行ってしまった。追跡を諦め、上から岩場を観察しながら、様子をうかがっていた。波が打ち付ける岩場の端まで行き、岩を齧るかのように、口をつけていた(写真)。

 何を食べていたのか、ここのサルは海の幸も堪能すると聞いている、海藻や貝など、ふと自分の夜の食卓が気になった。グールミングをするもの、一人たそがれるもの、愛を語り合うもの?。オスとメスらしい2頭がそのコドモらしい個体にちょっかいを出されながらも。サル達は、海岸に行ったきり戻ってこない彼らを待ちきれず、小屋への帰路に就いた。その道すがら、あちらこちらで、シカ達の恋のささやき?、鳴き声を聞いた。


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