下北半島のサル調査会

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 さて、その翌週は、脇野沢に直行しました。松岡さんによると、実りの秋でサルは基本的に山の中にいる。里に下りてきているとすると・・・「もしかすると、A2−84群がいるよ。」との事。
車で、鱈の里方面に向かっていると、いました。サルでなくサル追いのオジサンたちのバイクが。
「サル追いのオジサン」。調査会の面々はこう言っていますが、猿害対策として田畑に出没するサルを追い払うため村に雇用されている人達を見つけました。
 オジサンに聞くとA2−84群がこの林にいると言うことでした。そこは田んぼに面した林で、実った穂を食べにきたサルとここで一時間近く攻防戦を繰る返しているとの事でした。
「ラッキー!車から降りて探す前に見つけられた!」と、私は落とし穴に気付かず双眼鏡一つ持って観察を開始しました。
30分もたったでしょうか、サルの群れは道を渡って対岸の田んぼと山に移動し始めました。調査期間中なら全頭カウントのチャンスなのですが、いかんせん一人ですし、道は曲がりくねって見とうしが効きません。カウントは早々にあきらめどちらの方向に向かうかだけでも確かめようとしました。するとサルは、道の脇の田んぼをほとんど素通りして山の方に向かってゆきます。サルの向かう先には、村営のスキー場があります。スキー場なら、開けていて見とうしが効きます。私は、サルの群れを追い越すべくスキー場へ急ぎました。ここには、サル追いのオジサン達も入ってきていません。スキー場の中腹でしばらく待つと1頭2頭とサルがやって来ます。私はサルの進路を予測できた嬉しさと次々とやってくるサルのカウントをするのに夢中になっていました。そうこうしているうちに、サルの数はどんどん増えて群れの先頭はスキー場の天辺近くまで到達していました。
広く開けたスキー場の斜面いっぱいに80頭以上のサルがいて、真中に私が一人立っている。その私を無視したように、でもしっかり意識しながらも平然とサルが通過していく。私は興奮していました。そして落とし穴に落ちている自分に気がついたのでした。「カメラは車の中だ・・・」
 へこみそうになる自分を罵りながら、サルが消える方向を見極めようとサルの後について斜面を登り始めました。するとスキー場の天辺近くに興奮した若い数頭のサルがいます。双眼鏡で見ると斜面に置かれた干草のロールの上に向かってしきりに威嚇していました。そのロールの上には、キツネが座っています。きっとこのスキー場を縄張りにもつキツネがここでちょうどサルの群れに出くわしたのでしょう。ぞろぞろと大群でやってくるサルの群れに驚いたキツネは干草のロールの上に飛び乗ったようです。サルの方も、群れの進行方向にキツネが居座っていて困っているようです。一番近いサルとキツネの距離は5mもありません。好奇心(?)に負けたのか、サルが距離を詰めるとキツネは腰をそっと上げ逃走体勢に入ったようです。次の瞬間、正面からサルがロールに飛び乗ろうとするとキツネは向こう側に飛び降りました。サルがロールの上に辿り着いたときには、そこはもぬけのからでした。キツネはそのまま逃げ去ったのかなと思っていると、ロールの裏側からトコトコと出て来て先ほどまでサルの居た辺りに座り込みロールの上のサルを見上げています。場所が入れ替わっただけ・・・まるで鬼ごっこです。またしばらくの静寂の後、今度はキツネがロールに飛び乗るとサルが後ろに降りてもとの配置に戻りました。同じことを3度繰り返したとき、スキー場からは群れの姿が消え、ここには1頭づつのサルとキツネとヒトしか居ません。群れの方向も見失った私がふと見るとロールの上には、キツネが居るだけです。そのキツネも今までと違って明らかに私に一瞥をくれたあと、ロールの後ろに飛び降り、姿を消しました。
 あのサルとキツネは、まるで鬼ごっこをして遊んでいるようにも、また片方がもう一方をからかっているようにも見えました。そうサルとキツネの化かし合い(?)だったのかも・・・
でも本当は、サルとキツネの化かし合いを見ていた私が共同作戦で化かされたのかも知れません。薄暗くなりかけたスキー場を後にする私の本日の教訓・・・・・
「これからは、いつもカメラを抱えて車を離れよう!」

そんな訳で、後半の話の方には写真がありません。あしからず。・・・・でも、本当にあったんですよ。この話。


文章・写真   小堀 睦


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