
「下北通信」は、サルに限らずいろいろな物事を取り上げるページとして企画されています。そこで今回はサルも出てきますが、ちょっと面白い経験をしましたのでそのお話を・・・・
この秋、私は下北に住み着いて3年目になりますが今まで下北半島内の狭い地域にしか足を踏み入れていないことを反省して、雪が来る前にあちらこちらの今まで入ったことのなかった山に踏み入っていました。
この日も朝から下北半島北西部のあたりをうろつき、午後3時頃から車で国道338号線を脇野沢方面に向かっていました。車が長後に入りヘアピンカーブを曲がりきった所に、それはいました。

一匹のキツネが、ちょこんと道端に座っています。そのキツネは明らかに私の車に注目していましたが、道を渡ろうとするそぶりも警戒している様子もありません。道の端に行儀良く、お座りの体勢で動きません。あれっと思いキツネの前を10mほど通り過ぎ車を止めると、こちらにやってきて私の車の周りを2周してから運転席の横で、また座り運転席の私を見上げています。そう何らかの餌を期待しているのです。その間も反対車線には車やバイクが通過していきます。5分ほどそうしていたでしょうか、餌をもらえそうもないと判断したのかキツネは茂みに戻っていきました。
明らかにあのキツネは、自分の姿を見て止まった車からは餌がもらえることを学習していました。人は自分の思い込みで安易に野生の動物に餌を与えます。それが愛情だと信じて。北海道知床半島のキタキツネや日光いろは坂のサルたちと同様に車のスピードが落ちるところで姿を見せると餌がもらえる事があることを知っているのです。こうした事態が定着すると、待っているのは彼らにとって悲劇の結末です。ここ下北半島でもタヌキやキツネの交通事故による死体を目にすることは日常的にあります。何より人間の生活圏に近づきすぎた野生動物にはさまざまな危険があることを、より多くの人に知ってもらわなければならないのです。
ちょこんと座り愛嬌を振りまいているようなキツネが、妙に物悲しく見えた出来事でした。
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