
1.はじめに
下北半島に生息するサルは、世界最北限のサルとして有名ですが、日本列島の各地に暮らすニホンザルと比べ、身体が大きいこと、体毛が長く・細く・密生していること、体色が白く淡いこと、などが外見上の特長と言われています。これらの特長は、北国の雪ぶかい自然環境で暮らす上で、見事に適応した結果と考えられています。この報告では、体重を測定することで、大きな身体という特長を体重の面から明らかにすることを目的としたものです。

2.概 要
1) 調査期間
1993年8月から1996年7月
1993年8月から1994年10月までは2カ月ごとに測定、その後1994年10月から1996年7月までは毎月測定した。測定回数28回。
2) 調査対象群と個体
A2-85群(当時28頭)
個体名
ウメ・・・・25歳以上の老雌
ハギ・・・・推定15歳の雌
ウルシ・・・6歳の雌
ムギ・・・・4歳の雌
アンズ・・・2歳の雌
ブリ・・・・20歳以上の雄 (調査中に死亡)
ジンベイ・・推定12歳の周辺の雄 (調査中に行方不明)
イトウ・・・10歳の雄
ハヤ・・・・3歳の雄 (調査中にA2-84群に移る)
モモタロウ・・・2歳の雄
コイタロウ・・・1歳の雄
年齢は1993年8月現在
*A2-85群は、主に夏から秋にかけて農作物に依存していましたが、体重測定の期間中の1994年から脇野沢村の広い範囲で電気柵が張り巡らされ、1995年には畑への依存度もかなり低いものになっていました。O群など人を見ては逃げ去る群れでは個体ごとの体重測定は不可能、また、サル山公園などの餌づけされた群れの体重測定では自然の中で生きるサルの体重の変化とは言い難く、野生群の連続した体重測定を目的に、個体識別ができ人馴れしていること、なおかつ自然の食べ物を採食していること、などの条件に合う群れとしてA2-85群に白羽の矢が立ちました。
3) 測定方法
1目盛りが50g、測定範囲が1〜20kgの台バカリを使用。
*雨や雪の降らない日を測定日とし、測定の間隔を一定にするために毎月月末の1週間を測定の週としました。
4) 測定期間中の気象状況
1993年・・・・下北地方のコメの作況指数が0となった大凶作の冷夏で、日本がアメリカやタイからコメを輸入した年。秋の山の実りも大凶作。冬は暖冬。
1994年・・・・各地の気象台が何十年ぶりに最高気温の記録を塗り替えるほどの猛暑。秋の実りも大豊作。冬は暖冬。
1995年・・・・気温についても山の実りについても、四季をとおして平年並の平均的な年でした。ただし、冬は暖冬。
1996年・・・・気温についても山の実りについても、四季をとおして平年並の平均的な年でした。ただし、冬は暖冬。
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