1994年の捕獲申請の時までは、私たちはいかなる捕獲にも反対してきました。その理由は、 @下北のサルの全容が1960年代以降、掴めていなかったこと。すなわち保護をするにも捕獲をするにも、何群・何頭いるのかもわからなかったのです。そのような状態での捕獲は地域的な絶滅も伴う可能性も否定できず危険であったこと。 A猿害が起こったらすぐに捕獲に踏みきるのではなく、その前にやるべき対策、例えば電気柵での対応など、があったからです。
その後、1998年「下北半島のサル調査会」は、それまでの調査結果を踏まえながら、下北半島全域のサルの群れの数・個体数の変動や増加率などを調べました。それらのデータをもとに将来の下北半島のニホンザル分布拡大をシュミレーションしたところ、現在の状況と傾向が続いた場合、2015年から2020年にかけて下北全域にサルの分布が広がることを推測しました。
そこで「下北半島のサル調査会」は2000年度の報告書で、共存・共生に向けての
提言を発表しました(ホームページの提言を参照)。ここのサルは天然記念物です。しかしたとえ天然記念物であっても、人間の財産や身体に危害を加えるような状態を良しとして黙認することがよいというわけではないはずです。サルに、そこに住む人間の生活を認め侵害してもらってはこまるのです。そのかわり、私たち人間側も彼らの生活を守ってやる必要があります。お互いがお互いの生活を大事にすることが、人間側のとる政策の出発点であろうと考えています。
今回の青森県の捕獲決定については、特定鳥獣保護管理計画に基づいたものです。しかしながら、この計画の策定に私たち調査会のメンバー、NPOのメンバーは入っていません。ただ、事務局長の松岡が一度だけオブザーバーとして、サルの現状について意見を述べたことはありました。また、ニホンザル保護管理策定に関して、公聴会もあり、意見を求められたこともありました。この時も、「地元の人達が判断できる体制を望むこと」を言うだけで、将来を見据えたうえでの協議というものではありませんでした。 青森県には、是非ともサルにもわかりやすい、将来に向けてのきめの細かい、両者の生活が大切にされるビジョンを、早急に示していただきたい。そうすべき時期にきていると思われますし、私たちNPO法人もよりよい方向に向けて努力していく決意でいます。 |