下北半島のサル調査会

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【提言】

1.農作物被害の軽減と民家侵入の防止のため,被害住民の自己防衛を認める。

 現行の鳥獣保護法・文化財保護法では、被害住民が天然記念物のサルを捕獲・駆除することは固く禁止されています。この提言は、法律を改めることを求めているのではなく、現行の法制下でも住民の財産や生活が脅かされる場合には、たとえ天然記念物であっても、被害住民が自己防衛できる体制を望むものです。例えば、捕獲や駆除の申請は市町村とし、捕獲方法を限定し、被害住民が実行にあたる。サルの処分は、実行者が最後まで責任を負い、市町村へ結果報告を義務づける、といった内容で、日々の生活の場で被害を受けたとき、一人一人の住民の判断で実行できる現実的な方策だと考えられるわけです。
 ただ、自己防衛を認めるとはいえ、不測の事故や人間をはじめサル以外の動物への影響を十分に配慮する必要があり、例えば、トラバサミ・毒物・銃などによる捕獲や駆除を禁止する。多量捕殺など著しくサルの生態を乱す行為を禁止する。個人で自己防衛できない場合は、同地区の住民の協力を得て共同作業として対応する、といった一定の規制は必要でしょう。


2.下北半島のサルは天然記念物としての対応をはかる。

 同時に、行政機関は、サルの個体数の減少や生息環境の改変などで、下北のサルの絶滅が懸念される場合、絶滅を回避する保護政策をあらかじめ視野に入れておく。農作物の被害状況の把握と捕獲ならびに駆除個体の情報の収集に努める。生息分布状況を継続調査し、下北のサルの現状を常に把握し続ける。地域住民へサル情報を提供し、地域住民と一体となったサルの被害対策がとれる環境づくりに努める、といった諸施策を実行することが欠かせないでしょう。
 また、商品としてのサル取引などは現行通り全面禁止にする。被害住民以外による捕獲や駆除は禁止にする。天然記念物指定を堅持し、その理念に基づき、サル及びその生息地の保全を図り、他種との交雑の防止にも努める、といったことを実施する必要があります。

3.共存・共生への土壌の形成。

 以上2点を基盤に、将来のあり方として、すべての関係機関や地域住民の合意のもとに、野外博物館構想を再検討することが望まれます。すなわち、下北半島全域をオープン・フィールド・ミュージアムと認識し、自然観察や研究などを通して、子どもたちや青少年の体験学習や研修の場として活用する。自然を的確に捉える人材の育成に努め、同時にモニター化を推進する、といったことを地道に展開していくことです。

 私たち下北半島の調査会の提言は以上です。本会のメンバー一人一人とサルとのつきあいに濃淡はあるものの、かれらからたくさんのことを学んできました。時には助けられたり、時には洞察力のなさに打ちのめされたり、生活の糧として今の自分がサル抜きでは考えられない調査員もいます。そんな恩人であり、友であり、師である下北のサル、その捕獲や駆除を認めること、それは本会にとって断腸の思いで下した決断です。ただ、断るまでもないことですが、捕獲や駆除を奨励しようとしているわけではありません。天然記念物といえども、生活に支障をもたらす時には、被害を受ける住民の自己防衛を認めるべきだということです。貴重で大切なサルですが、同時に地域住民の日常生活も尊重されなければなりません、そして、なによりも北国、下北の風土に培われた人々の自然への思想や自然観を大切にしなければならないと思うからです。国や県が保護管理するサルから、住民の一人一人が判断できる、地域の人々のサルに戻したいのです。サルの保護も被害対策も、今後、いくら見事な施策を提示し巨額な税金をつぎ込んでも、おそらく根本的、抜本的な解決に至ることは決してないでしょう。自然保護は地域住民一人一人のこころの反映として具現化されていかなければ持続性、継続性がないからです。「被害さえ出さなければ、サルを認める」、下北の人々にこの思いがある限り、長い将来にわたっての人とサルとの良好な関係が取り戻せると、私たちは確信しています。

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