下北半島のサル調査会

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File 33:新聞記事「雨の森に生きた橋」を読んで

  朝日新聞 (2008年1月6日1頁) にインド北東のメガラヤ州にある町 「チェ
ラブンジ」の渓谷沿いにゴムの巨木があり、その生きたままの根を使った吊橋
の写真が掲載されていた。この地は年間降水量が26,000ミリという世界記録を
もっているという。ベンガル湾の湿潤な空気が南西風で山岳地帯に運ばれて大
雨をもたらすが、この橋のおかげで渓谷を安全に渡れるという。


  橋の上にひとが乗っている写真から想像すると、 延長20メートルくらいか、
それ以上にも見える。巨木の幹のやや高い位置と低い位置から水平に人間の大
人の胴くらい太い気根のようなものが対岸まで二本延びており、 これら (足場)
のうえを歩きやすいようにV字 ( またはU字 ) 状に立ち上げた手すりを細い根
でつくってあるように見える。 おそらく、 人間が巨木から延びる根っこをうま
く誘導し、 足場、 手すり、 フェンス状にこしらえているのだろう 。 数千本の根
を利用し、10〜15年で出来上がると書かれていた。木の幹から根を誘導し、橋
として完成するまでの月日のことだと思うが、 意外に短い期間でできあがるよ
うに思った。驚くべき人間の知恵である。向こう岸に延びた根の末端は大岩に
絡まっているようにも見えるし、 また、 地面に発根し、 若い木が天を目指して
生えているようにも見え、定かではないが興味をそそる。


  記事には、 世界一の大雨が降るこの地で、 地球温暖化に関する雨の研究を進
めている日本人研究者 ( 林泰一氏、京都大防災研究所 准教授 ) がいると書か
れている。  ここ数十年の記録では雨の降り方 ( 多い ・ 少ない ) の差が大きくな
ってきたと報告している。 地球温暖化の研究には気候区分や生物生息区分の境
目がどのように移動するかとか 、 北極圏やヒマラヤ山脈の氷河等局地的な場所
での変化を察知する研究などが見られる。 二十年ほど前は地球温暖化といわれ
ても全くピンとこなかったが 、 早期にこの問題に着目し 、 地味な研究をはじめ
ていたひとたちには頭が下がる。 今日、 わたしたちはその結果を聞き 、 やっと
危機感をもつようになってきたのである。 ゴムの巨木の吊橋の建設に化石燃料
を必要としないだけでなく、 生きた橋そのものが温暖化の主原因である炭酸ガ
スをも吸収してくれる。これはまさにエコブリッジと言えるだろう。


2008年1月6日 鈴木 邦彦


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