下北半島のサル調査会

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File 27:秋の余韻

初雪から一週間ほど過ぎた11月のなかば。里山の木々はだいぶ葉を落とし、幹がくっきりと見えます。森全体が透かすかしてきました。遠くにみる山肌には最近降ったばかりの雪が残っており、茶色の林床を薄く、まだらに覆っています。

森の中にはいると、ひところあった色とりどりの賑やかさはどこかに消えてしまっています。木々の枝に残っている枯れ葉の多くは茶封筒のような地味な色ですが、そのなかでひときわ目立つのが黄色系統の葉です。マツブサは薄黄色の葉で明るく、やや橙ぎみの黄色の葉はオオバクロモジ。少しの風にもひらひらと揺れているのはイタヤカエデの黄色い葉。なんとか枝にしがみついているかのように見えます。でも、今時、森一番の目立ち屋さんはカラマツ林だと思います。人工林でありながら上品さを感じさせるのは、その葉と枝のもつ繊細さなのでしょうか。こんな主役たちに押されているのは、暫く前に、燃えるような色で秋を風靡したヤマモミジの葉。今は醒めた赤橙色の縮れた葉となって、ちらりほらりと残っています。

しっとりと湿り気をおびた林内に立っていると、やわらかく陽の光が差しこんできました。わずかな風にもはらはらと舞い落ちるカラマツの葉。光を受けて、まるで無数の短い金の糸くずのように光っています。それは、ずうっと前、鼻の穴がツンとするような二月の寒い日に見たダイヤモンドダストにも似ているように思います。

足元を見ると、地面に積もったブナやミズナラの茶色の葉に混じって、オオヤマザクラの赤い葉やシダ類の緑の葉が半分ほど雪に埋もれています。「トントントン」という小さな音に、ふと顔を上げるとスギの横枝にとまったカケスが古い枝打ち跡を突っついています。今しがた、どこか見えないところを「ケッ・ケッ・ケッ」と鳴きながら飛んでいってしまったのはアカゲラだったのかもしれません。わたしは乾いた大きな石を探して腰をおろし、秋の余韻をもう少し楽しむことにしました。

2005年11月19日 (易国間川にて) 鈴木 邦彦


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