
下北に行く前の日、僕はまったく眠れなかった。なにしろ日本列島で福井県より遠くに行くのは初めてだったし、電車の中で夜を過ごすなんて楽しすぎるからだ。
当日の朝、学校にいく日はギリギリまで寝るけど、この日だけは違った。朝ごはんを食べて、速い足取りで駅に向かった。夜行列車にすぐに乗るんだと思ってたのに、桃ちゃんに「大阪についてから乗るねんで」と言われてガクッときた。やっと大阪について夜行列車を見たら、思っていたのと全然違い、かなりオンボロ電車だったので少しショックだった。ベットルームへ走って行き見てみると、かなり狭かった。あと一つ不安が頭をよぎった。「ベッドから落ちるかも」でも、ちゃんと落ちないようにしてあって良かった。少し行ったところで大きな海が見えた。桃ちゃんに「海が見えた」と言ったら「あれは琵琶湖やで」と言われて、僕は初めて見た琵琶湖に驚いた。
朝起きると青森のかなり近くに電車は止まっていた。兵庫県はかなり暑かったけど青森は涼しくて良いだろうな〜と思って電車を出たら、予想通りかなり涼しかった。でも、15分くらい経つとすごく寒く感じてきたから、近くのホテルで朝ごはんを食べた。モーニングのわりにかなり高かった。
フェリーに乗ったら桃ちゃんの友達がいて、僕は桃ちゃんより若いと思った。
荷物をバンガローに置いて、桃ちゃんについてサルを探しに森へ入っていった。でも、いっこうにサルは見つからず、ただ疲れただけで一日目は終わった。
二日目、松岡さんと一緒にサルを見に行った。探知機を使ってサルを探した。少し歩いていくと、変てこな声が聞こえて、木がゆれるからなんだろうと思って双眼鏡で見るとサルがいた。松岡さんが遅れて来る桃ちゃんとブラックホールさん(良く食べる人)に「おったぞー」と言った。
サル達が僕に近づいてきて、怖い顔で睨んできた。僕はすごく怖かったけど写真を沢山撮った。それなのに桃ちゃんがフィルムを入れるのを失敗して、すべてがパーになってしまってかなり激怒した。
その日、サルに何回も威嚇されてかなり怖く、「もう絶対に来るもんか」と思った。だけど、すごく楽しかったし、みんな優しい人だったのでまた行きたい。
でも、少年と呼ばれるのは嫌でした。
写真・文章 清水 大輝
甥が野生のサルを見たいから下北に連れて行って欲しいと言い出したことに、とても驚きました。でも、同時に嬉しくもありました。私が大好きなサルたちを甥も気に入ってくれたら嬉しいと思いました。
私は甥を連れてA2-85群に会いに行きました。サルたちは甥がどんな子か気になったらしく、近づいて来ました。甥は足が震えるほど怖かったらしいです。それがわかったからか、子ザルたちのおもちゃに選ばれたのか、何回も小ザルに囲まれて威嚇されました。正直、甥っ子をそっとしていて欲しかったので、かなり鬱陶しく感じました。甥の口から「僕もう嫌や、はよ帰りたいわ。」と聞いてがっかりしました。本当はとても楽しくて幸せな気分にさせてくれるサルたちなのに…って思いました。
生まれたばかりの赤ちゃんザルや愛らしい春の植物に逢えるので、春の下北は大好きです。
帰りの寝台列車の中で、「夏も来たい。だって楽しかったもん」と甥に言われたときはすごく嬉しかったです。
写真・文章 清水 桃子