下北半島のサル調査会

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File015:怪我をしたコゴミ

写真1:怪我をしたコゴミ

 200111月。私はコゴミに発信機を着けた。その時、コゴミにはベイビーがいた。20021012日。A87群を調査している堀内さんと話しをしていると、コゴミが死にそうな怪我をしたとのことだった。経過は以下の通り。
 109日群れの中にコゴミの姿はなかった。おじょうに当日の怪我を認めた。
 1011ハッカクとオジョウに怪我の跡がある。共に2日前のものか。コゴミも怪我をしている。コゴミは群れの後からとぼとぼ付いて来ているが、追いつけない様子。
 1012日群れは瀬野川にいる。コゴミは貝崎沢の様子。
 1013日群れは九艘泊川の左岸から右岸に渡る。コゴミは貝崎沢の源頭部右岸のヒバ林にいる。怪我の痛みからか動けない様子。よく傷口を舐めている。眠っていることも多い。1時間ちょっと観察して引き上げたが、コゴミ1頭だけだった様子。

 詳細
写真2:怪我の様子 10月131158私は貝崎沢源頭部右岸のヒバ林に達した。電波がかなり強いが姿が見えない。鳴き声も、足音も、枝揺れの音もしない。ハリギリの大木がある。この木の周辺にいると思われるが、何も見つからない。ゴロっと林床に寝転び、空を見上げるが、眩しい太陽と青空しか見えない。ただ、ヒバもハリギリも樹幹の方は見えない。諦めかけた時、ハリギリの隣のヒバの枝からコゴミが顔を覗かせた(1313)。そのまま、ハリギリの枝に移る。確かにコゴミだ。歩いている。しかし、元気がない。日の当たる枝先まで歩いた後、左手を舐め始めた。左手は人差し指の先が切れている様にも見える。腫れている。親指に動きが見られない。しきりに親指の付け根と人差し指の先を舐めている。
写真3:顔の怪我の様子 顔の傷もひどい。左目の周辺だけ一応まともな様子だが、左目も半分しか開いていない。右目は完全につぶっている様子。顔がヤケドを負ったように腫れている。所々、黒くなっている。しばらくして眠り始めたよう。動きを止める。尾の毛が薄い。しばらくして再び左手を舐め始める。顔に手を当てることもある。向きを変え、元来た枝を引き返す。左手を使わずに歩いたのち、両手を伸ばし、ヒバの木に移る(
1352)。コゴミはヒバの枝に座り、眠り始める。近くには他のサルはいない。シロハラやカケスが鳴いている。コゴミはほとんど動かないので私は引き上げることにした(1415)。下山開始直後、サルナシの香りがするので、ふと見上げるとサルナシがたくさん実っていた。
文章・写真1   植月 純也
写真2,3    田中 俊明


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