下北半島のサル調査会

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Order 13:カニツリグサ

  ≪ カニツリグサ ≫

 脈々と連なる山々の斜面を、まるでヘビが這うかのごとく伸びる道路。切り取ったのり面をコンクリートで固めたスーパー林道から、伐採木を運び出す作業道まで、今や日本列島のあちらこちらの山々で見られる風景となっています。生活道路として、観光用として、災害時のライフラインとしてなど、建設理由はあるでしょうが、その利便性を享受するか、自然環境の改変を嘆くかは、人それぞれの価値観や心情で異なることでしょう。このレポートは、そのことについて言及するつもりはありません。実は、サルはこうした道路やそれに伴う植生の変化を、暮らしの中に巧みに取り入れ利用しているのです。
 近年、原産地の異なるイネ科植物が、日本全土に急速に広がりました。道路の新設や拡張に伴い、切り土したのり面の土止めとして用いられたり、緑化用としても植えつけられました。また、牧草として栽培したイネ科植物が野生化したことも原因の一つです。下北地方にも、イヌムギ・カモガヤ・カラスムギ・コウボウなど数種のイネ科が生い茂っています。
 イネ科は種類が多く、勉強不足な私にはその同定はとても難しいことです。今回のカニツリグサもカモジグサと迷いました。花穂が薄茶色をしていることでカニツリグサとしました。このカニツリグサは、垂れ下がる花穂でサワガニ釣りをすることからの命名と聞きますが、細長く丈夫な茎で輪を作り、カエルを釣って遊んだ少年時代のことを思い出させてくれます。
 初夏、サルは道路の脇やのり面に密集するイネ科植物を、まさに道草を食うといったふうに、しごきながら歯ですき食べます。小穂のひとつひとつが小さいため、多量に食べることで食の実感を得ているようです。よくもまぁ、水も飲まず、あんなかさかさの小穂を口いっぱいに入れるものだと、感心してしまうほどです。







文章・写真   松岡 史朗


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