下北半島のサル調査会

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 A2-84群

1985年A2−84群当時24頭の周辺ザルとして確認して以来、現在までずっとA2−84群一筋で生きています。推定年齢は24〜25歳。どの群れで生まれたのかは不明です。
顔や体に大きな傷跡もなく、立派な体格の堂々とした見た目も惚れ惚れとする美しいサルです。
サルの世界には「オスはいても、父親はいない」と言われますが、シャチの子孫はきっと多いことでしょう。A2−84群中でも最も頼りになる存在感の強いサルです。
下北半島南西域のサルにはオスには魚の名が、メスには植物の名がつけられていますが、眼光の鋭さからあえて海の殺し屋の名をもらったものと思われます。まさか、命名者がシャチを魚と間違えたとは思えません。
個人的なことで申し訳ありませんが、1991年群れからはぐれたメスのベビーをA2−84群に戻したとき、私はシャチと森の中で対決しました。悲鳴をあげるベビーを抱き上げる私にシャチは跳びかかってきたのです。安全に無事に母ザルにベビーを帰したかった私は母ザルが現れるまでベビーを放しませんでした。私はひるむことなくシャチの胸板に右足で2度、3度と蹴りを入れました。それでもシャチは身を屈め、機を伺っていました。両者のにらみ合いが数分続き、このままでは噛まれると恐怖と不安を感じた私はベビーを放してやりました。これでシャチの集中力が分散したのか、緊迫した空気は解かれたのです。この決闘のような出来事以来、シャチが私を一目置くようになりました。群れの中で私を威嚇しなくなったのです。私の勝手な思い込みかもしれませんが・・・
2001年3月、シャチがA2−84群から離れてヒトリザルになっている姿を確認しました。歩く姿にも覇気がなく、腰を落とし、老いが感じられました。一時的な群れ離れなのか、それとも群れの行動についていけなくなったのか、今後の動向が気になります。

文章・写真  松岡 史朗


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