下北半島のサル調査会

HOME> 北限のサル > 2001年夏季調査報告ダイジェスト





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≪はじめに≫

 今夏、下北は過去2年の猛暑とはうってかわってやませの吹く涼しい気候で、カラッと晴れたのは2日間だけであったが、アブも少なく調査はとてもしやすかった。期間は8月6日から11日の6日間、調査範囲は脇野沢村全域・佐井村牛滝集落・川内町宿野部川流域とかわうち湖の南で、参加者は述べ39名であった。以下、簡単に調査結果を報告する。

≪調査結果≫

A2‐84群
 6日間調査した。調査前日に脇野沢本村北にあるガソリンスタンド付近で、A2‐84群とA2‐85群が接近して泊まったという情報があった。A2‐84群の移動はガソリンスタンド付近から瀬野牧場・牛ノ首岬、再び瀬野牧場を経て蛸田・寄波、再度牛ノ首岬から瀬野へ移動し、アカンボウ19頭を含む84頭を数えた。

A2‐85群
 6日間調査し、前述したように脇野沢本村北のガソリンスタンド付近から北上し細間沢・滝山を経て源藤城で折り返して南下、滝山・細間沢・田ノ頭沢の生コン工場から桂沢まで移動した。個体数はアカンボウ12頭を含む50頭を数え、今年5歳になったメス4頭の内、3頭がアカンボウを産んでいた。更にコナス(推定19歳メス)が調査直前の8月上旬に出産し、脇野沢における記録で最も遅い出産日となった。主要なメンバー(名前のついているオス3頭とメス16頭)に変化はない。

A‐87群
 6日間調査し、九艘泊の新設道路とヘアピンカーブ北の伐採地周辺を移動し、アカンボウ4頭を含む24頭を数えた。この群れの最年長と思われるサクラ(オトナメス)が5月から行方不明で、死亡したと思われる。

O群
 本調査期間前を含めて7日間調査し、細間牧場周辺から面木牧場、東へ進んで国道を渡り、源藤城林道・滝山林道を南へ横切った。個体数はアカンボウ8頭を含む51頭を数えた。3年ほど前から識別しているブナ(オトナメス)をほぼ毎日確認した。

B群
 6日間、面木・武士泊・蛎崎越沢・大荒川・長右衛門の各林道と湯ノ沢岳、海峡ラインを調査した。大荒川・長右衛門の両林道で数個の糞や声、数頭のサルを確認したが、群れに直接結びつく情報はなかった。

U群
 2日間調査し、国道と佐井村牛滝集落への分岐付近から集落北側の国道を移動、アカンボウ8頭を含む48頭を数えた。この群れは過去2年間、調査中に発見できずにいたが、久しぶりの発見となった。今回は牛滝集落周辺から北を遊動しているZ2群も長後・福浦で確認されたところから、この群れがU群であると断定した。

その他の野生の群れ
 上述の6つの群れの周辺を5日間調査した。範囲は脇野沢村小沢地区、口広川・男川・宿野部川流域、川内ダムの南側であった。サルの情報は宿野部川支流の西又沢で糞が1個、地元の方からの情報で8月の入ってすぐに小沢地区で2頭を目視したということで、群れに結びつく情報はなかった。

A1群(野猿公苑)
 アカンボウ9頭を含む52頭を数えた。

タイワンザル
 調査中にタイワンザルの目撃情報はなかった。

食性
 畑のもの7品目、自然のもの44品目(うち動物性のもの4品目)を食べていた。


≪終わりに≫

 今回は、Aの3の群れ(84・85・87群)の結果以外に、O群がほぼフルカウント出来たり、久しぶりにU群の調査ができたりと、B群以外は成果があった。B群についてはO・U群との関係が問題となるのだが、調査中に3つの群れが確認されたことはほとんどなく、最近ではB群の存在自体を危ぶむ声もある。また、拡大を続ける脇野沢周辺より北の群れとの関係、大所帯となって分裂の可能性を秘めるA2‐84群とその周囲の群れへの影響など、まだまだ目が離せない出来事が多く、今後も興味深い話題を提供してくれそうである。
 本調査の結果を今後もよく検討していこうと思う。

文章  小林 綾


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