下北半島のサル調査会

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≪はじめに≫
 2001年12月24日から12月29日の6日間、学生から社会人まで総勢45名の調査員が、脇野沢村全域(小沢地区を除く)と北部は佐井村牛滝地区・川内町の野平地区、東部は川内町宿野部川流域までを調査範囲とし、初冬の下北の山々をサルを求めて踏査しました。調査期間の前、12月20日ごろに天候が崩れ、山々は20cmほどの積雪があり、調査中も穏やかな日々が続き、サルの調査の条件としては最適な状況でした。

≪調査結果≫
A87群 
 
 12月24日 九艘泊道路サル橋北100地点で左岸から右岸へ横断するA87群をフルカウント。
       ベビー3頭を含む21頭を数える。
 12月25日 九艘泊左岸斜面の道路工事現場付近から斜面を登り、
       ガンケ山から南に伸びる主尾根まで移動。
 12月26日 ガンケ山から南に伸びる主尾根の東側(瀬野川側)、瀬野川上流部から北上し、
       ガンケ山南まで移動。
 12月27日 ガンケ山周辺に足跡はあるものの、群れの確認はなかった。
 12月28日 ガンケ山周辺を踏査したが、群れの発見はなかった。
 12月29日 ガンケ山周辺を踏査したが、群れの発見はなかった。

A2-84群
 12月24日 A2-84群を脇野沢村桂沢地区の斎場跡地周辺で発見。
       脇野沢小学校北の山際を通り、八幡宮近くのヤマグワの林まで移動。
 12月25日 桂沢地区、八幡宮周辺の狭い範囲に留まる。
       国道338号線の海岸沿いの斜面で長い時間過ごす。
 12月26日 桂沢地区のヤマグワ林から尾根を東へ越え、辰内沢右岸まで。
       尾根越えの時にカウント。83頭+αを数える。
 12月27日 辰内沢の出合い右岸の狭い範囲に終日広がる。
 12月28日 辰内沢出合い右岸から海岸線を国道338号にそって西へ八幡宮まで移動。
       海岸線のマツの種子などを採食していた。
 12月29日 八幡宮周辺、桂沢地区のヤマグワの林でヤマグワの冬芽・樹皮を採食。

A2-85群
 12月24日 A2-85群を田の頭沢出合い近くで発見、イノシシの館の南まで移動。 
 12月25日 イノシシの館東側の山際周辺から北上し、下滝山沢南まで移動。
 12月26日 下滝山沢から滝山地区の電気柵の畑、及びその周辺を通り、
       源藤城神社まで北上するように移動。
 12月27日 源藤城神社から源藤城の電気柵の畑の出入り口周辺で長時間過ごし、
       夕方国道338号線を東から西へ横断。
 12月28日 源藤城北部、脇野沢川右岸から南下、片貝の電柵畑を通り、
       滝山小学校北の農道を横断。この時にベビー12頭を含む50頭をフルカウント。
 12月29日 調査せず。

O群
 12月24日 青石から面木へ続く海岸線の尾根、ピーク300.7の西側でO群を発見。
       北西斜面に広がる。
 12月25日 面木林道より南の海岸線側で発見、
       その後、尾根を越え面木林道南の斜面に広がる。
       尾根越え時にベビー4頭を含む54頭+αをカウント。
 12月26日 面木林道南側、ピーク300.7の北側斜面に終日広がる。
 12月27日 ピーク300.7北側から尾根を南へ越え、青石左岸の枝尾根中腹まで移動。
 12月28日 青石左岸から南下、青石林道を広い範囲で横断、
       穴間林道との間のスギ植林地まで移動。青石林道に55頭分の足跡を確認。
 12月29日 穴間林道の出合いやや北から林道沿いに西へ移動、
       林道の車止め付近を北へ移動する姿を確認し、調査終了。

B群 
 12月24日 国道338号(海峡ラインの石碑まで)、源藤城林道、蛎崎越林道、武士泊、
       湯ノ沢岳南の武士泊林道を踏査するもサル情報なし。
 12月25日 国道338号線を北上し、大荒川林道入り口までサル情報なし。
 12月26日 大荒川林道、長右ヱ門林道、湯ノ沢岳南、武士泊林道、蛎崎越林道、              源藤城林道と踏査したが、サル情報なし。
 12月27日 長右ヱ門林道、湯ノ沢岳南、武士泊林道と踏査したが、サル情報なし。
 12月28日 調査せず。
 12月29日 大荒川林道、長右ヱ門林道、人切山から二股山への尾根を踏査したが、
       サル情報はなかった。

U群 
 12月24日 調査せず。
 12月25日 牛滝から福浦にかけて車によるパトロール。サル情報なし。
 12月26日 牛滝から福浦にかけて車でパトロール。
       福浦地区でZ-2群の一部と思われる7頭+αのサルを目撃。
 12月27日 堂ノ沢、石山沢、長右ヱ門林道(牛滝側)を踏査したがサル情報なし。
 12月28日 調査せず。
 12月29日 長右ヱ門林道(牛滝側)、小荒川、滝ノ沢、堂ノ沢、
       野平地区の南側地域を踏査したが、サル情報なし。

男川・宿野部川・口広川流域
 12月24日 男川流域を踏査したがサル情報なし。
 12月25日 男川の板家戸沢林道出合い北でオトナの♂1頭を含む2〜3頭のサルを目撃。
       口広川にはサル情報はなかった。
 12月26日 男川の板家戸沢出合いで西から東へ移動する子ザル1頭を含む
       7頭のサルの足跡を確認。
 12月27日 男川流域、弥五郎沢まで踏査したが、サル情報なし。
 12月28日 男川の滑川と板家戸沢間の男川左岸で10頭+αの足跡を発見。
       宿野部川流域にはサル情報はなかった。
 12月29日 男川流域の滑川西尾根で鳴き声と4頭分の足跡。

ハナレザル
 12月24日 七引橋南の国道338号線を横断するオトナ♂1頭を確認。
 12月26日 中細間林道でオトナ♂1頭を確認。
 12月28日と29日 九艘泊の道路工事周辺で人馴れしているオトナ♂1頭を確認。

タイワンザル 
 調査期間中、調査範囲内でタイワンザルの確認はなかった。



【採食物】
(自然のもの)
マツの種子(マツボックリ)、ササの脇芽と葉、ツリバナの冬芽と樹皮、ホオノキの樹皮、ツバキの葉、ニシキギ科の冬芽、ケヤマウコギの冬芽、ヤドリギの実と茎と樹皮、イタヤカエデの樹皮と冬芽、ヤマグワの冬芽と樹皮、シロツメグサの地下茎と葉、カラスザンショの葉痕と樹皮、イヌエンジュの樹皮、オオバクロモジの冬芽、ツタウルシの冬芽と樹皮、ツルアジサイの冬芽、アオダモの冬芽と樹皮、ブナの冬芽、サクラの冬芽、ミズナラの冬芽と樹皮、ツルウメモドキの実、マタタビの冬芽、クズの種子と樹皮、サルナシの樹皮、サクラについていたキノコ   
(畑のもの) ハクサイ、カボチャ、ダイコン、キャベツ、稲、ネギ、アカカブ



その他
2001年の秋から初冬にかけて、サルの交通事故が3件もあった。
2001年11月7日 国道338号ガソリンスタンド北200メートル地点で、A2-84群の周辺ザルのオトナ♂1頭が交通事故死。
2001年11月8日 国道338号ガソリンスタンド南100メートル地点で、A2-84群りの2歳の♂ザルが交通事故に遭う。治療・入院中。
2001年12月10日 九艘泊地区のセンター前で、A87群の♂のベビーが交通事故死。

 


≪おわりに≫
 今回は雪の状態や調査中の天候にも恵まれ、サルの調査を実施するには最適であった。それにもかかわらず、B群とU群の確認ができなかったことは残念であった。今後の課題にしたい。A2-84群が脇野沢村の辰内沢まで遊動範囲を広げていることがわかった。これまでの観察でA2-84群の遊動域の最東は桂沢地区までであった。A2-84群は個体数も増え、群れの分裂が予測されますが、今後の動きに注目していきたい。また、男川流域の10頭+αのサルの詳しい情報を積極的に調べていくことも今後の課題といえよう。 

        

文章・写真 松岡史朗


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