野猿公苑について、思いました  2005年9月29日  東京ゼロ戦三太

 野猿公苑での研究から、オスは群れを離れてよその群れに加わることや、その理由など、ニホンザルの社会や生態について多くのことが明らかにされてきました。一方で、他地域からの移植群であったり、個体数の増加や閉園による猿害の発生、人慣れザルが人を咬むなど、多くの問題があることも事実です。

 さらに、20−30年前からは、餌付けに頼らず、長期継続や人付け、テレメトリー法の調査によって、野生群でもニホンザルの生態や社会に関する貴重な成果が沢山あがっています。

 東京都檜原村南秋川流域にはマカロニ群が行動範囲を構えています。2004年1月、群れに所属するオスに発信器を装着しました。リー・バン・クリーフと名付けて、それからの1年半、群れとともにリーの暮らしぶりも観察してきました。アカンボウがリーと一緒に歩く姿をよく目にしたし、群れオスのフランコ・ネロと争って、街道筋の物置の屋根にたたき落とされたこともありました。また、行動範囲内での単独行動も2回確認しています。

 そのリー・バン・クリーフが2ヵ月前に群れを離れました。群れの行動範囲の西端から西に向かい、地形図上の直線距離14キロメートルを移動して、現在は山梨県丹波山村にいます。音波をたどって移動ルートは追跡できたのですが、彼がなぜ群れを出たのか、そこは想像しかできません。

 野猿公苑には苑ごとに特性があると思いますが、餌付け群のサルに関して、長期間の個体記録と管理技術が蓄積されている野猿公苑なら、例えば、群れを出そうなオスに事前に発信器を装着して、群れを出たときにはその後を追跡する。それを群れを出るに至った経過とともに記録することで、ニホンザルのオスの暮らしがより鮮明になるのではないでしょうか。
 野猿公苑は、宿命としての苦労を抱えているのですが、野生群では見きれないものを沢山観ることができる場なのではないでしょうか?。

 そのような意味で野猿公苑の役割は重要だと思います。新規開園は不要ですが。
 リーに装着した発信器の音波だけをとらえながらそのように思いました。


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