移入種問題  2005年3月11日  東京三太

 三戸さんの「現代の外来種問題は、生物学的現象にあるのではない」に異論はなく、勝手ではありますが応援させていただきます。

 青森県の下北半島には飼育施設から出入り自由になっていたタイワンザルの集団がいました(捕獲完了2004)。和歌山県の和歌山市南西部及び海南市北東部には、1950年代の中頃に閉園した私立動物園から放置されたタイワンザルがいますし、千葉県白浜町と館山市の境界付近には、100頭ほどのアカゲザルの集団がいます。このサルたちとニホンザルとの交雑が社会問題となっています。

 「国際結婚をしてもいいではないか」、「人間が連れてきたのだからサルに罪はない」また「在来種はもともとは大陸からの外来種であるし、タイワンザルとニホンザルが混血したところで世間一般で困る人はいない」という意見があります。たしかに彼らに罪はありませんし、タイワンザルとニホンザルの血が混ざったことが原因で路頭に迷う人はいないでしょう。

 この問題が何故問題になるのかは、三戸さんの主張どおり「人為の移入」だからです。複数のタイワンザルやアカゲザルが人間や人工物に頼らず、自分たちの力だけで海を渡って日本列島にたどり着き、そこでニホンザルと出会ってコドモをもうけるのであったら、それはまさしく自然にお任せすべきことです。サル目の中にはマントヒヒとギニアヒヒのように自然状態での混血はあって、これは進化の学問として研究対象となっています。

 一口にニホンザルと言っても、下北には下北のサルの、房総には房総のサルの、九州には九州のサルというように、同じニホンザルでも生息地によって体の大きさや毛の色などに、地域ごとの特性があります。この違いは、各地のサルを見慣れている人ならすぐに「これは高崎山産だ、これは志賀高原産だ」と見分けることができるほどです。もちろんこのことは形態学や遺伝学でも証明されています。

 ニホンザルは、固有種として、生息地ごとにその地の自然と深く関わり合いながら、日本列島の生態系(自然の多様性)をつくりあげてきた一員で、その体には日本の自然を解き明かすいろいろな鍵がはいっているはずです。人為的移入を生物学的現象の外来種とするのは、やはり「問題をすり替えて、ほおかむりすることだ」といえましょう。
 なお、「特定外来生物による生態系等に係わる被害防止に関する法律」が2004年に国会で成立しています。


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