続・移入種問題  2005年4月2日  東京流れ者三太

 三戸さん発、三太経由、タクミさんと移入種問題がつづき、それが頭に残ったのか?、ある夜、ある夢をみました。

 それは、日本の半島部に生きるアカゲザル群のワカオスが、生き別れになった母親を訪ねてインドに旅立つというものです。そのアカゲザルというのが、いわゆるサルではなく、26−7年前にテレビで放送されていた、堺正章演じる孫悟空(西遊記)なのです。悟空はきんとん雲に乗ってあっという間にインドに到着しましたが、アカゲザルと自分の姿とがあまりにも違うため、国外からの国内移入種になってしまった。という、何を考えていたのか、ほとんどわからない夢でした。

 夢から覚めて、はじめに思ったことは、移入種問題に関わり頑張っておられる個人や団体には、さまざまなプレッシャーがかかるのだろうな・・・。信念に基づいて遂行する方々には心から敬服する、ということです。夢とその後がアンバランスですが・・・。

 ところで、現在、「外来種」といわれるタイワンリス、ヌートリア、ウシガエルを例にとると、1990年頃までの彼らは長らく、そして一般的には「帰化動物」と呼ばれていたはずです。それが1995年頃には「移入種」で、2000年前後からは「外来種」、または「外来生物」という言われ方になって、現在に至っているように思います。
 私などは、帰化動物と昨今の外来種ではイメージがまるで異なっていて、“帰化動物”と聞くと、苦労の末によくここまで、という気持ちが湧いて、おもわず ウエルカム! と口走りそうになります。

 それにしても、国外からの移入種、そして国内移入種の種数の多いこと、さらにその移入経路と歴史には、改めて驚きです。地球上のどこかに住処を得た生物は、川や山脈、海などの自然の障壁やその種の食べ物の分布とか飛行能力などにより、移動範囲には限界があって、ニッチのすき間はできるもののそれはそのまま意識せずに、バランスのよい棲み分けが出来ていたのだと思います。ところが、日本ではとくに明治時代になってからだと思いますが、経済活動にまぎれて、あるいは意図して、国外から国内に数多くの、人為による移入種が入ってきています。その後彼らは、ニッチのすき間に生活の場をえて、あるものは在来種を駆逐圧迫し、あるものは定着し、そしてあるものはその過程にいます。それは動植物のみならず、寄生虫、ウイルスもあわせると大変な数にのぼります( http://www003.upp.so-net.ne.jp/consecol/alien_web/ :リストにはアカゲザルの記載がなく、今後追加されるものもあるはずです)。

 そして、リストを観ていると、すでにどうにもしようがないのかな、と思わせる生物もいいますし、その一方、タイワンザル、アカゲザルのように、固有種(この場合はニホンザル)が失われる危険な事態も数多く見えてきます。そこで私たちが考え、問われるべきことは、移入種が今後日本の多様性をどのように構築するのかではなく、「固有種・在来種が構成する原多様性とは」であるはずです。そしてつぎには、やはり、人為的な交雑は回避しなければならないということですし、移入種による在来種の消滅をくい止めるための“実行”ということでしょう。
 その意味で、ごくごく客観的に観ても、歩みののろいアカゲザル問題に関して、NFS(ニホンザル・フィールドステーション)が千葉県と日本霊長類学会へ要望書を出したことは、誠に重要なことであります。
 NFSの、5月に実施予定の武士泊海岸の化学ゴミ撤去は、物質版移入種問題だといえましょう。

 皆さん、5月の下北半島清掃作業に参加しましょう。そこでゴミを撤去して、ニホンザルについて、北限のサルについて、移入種問題について、三戸、濁水、松岡の三御大とともにおおいに語ろうではありませんか。


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