天然記念物「北限のサル」初めて駆除される
 2004年10月12日、青森県が人的被害を与えるサル24頭の捕獲駆除を脇野沢村に許可して以来、3カ月の経過後、2005年1月17日から2月28日までを捕獲期間とし、天然記念物として初めての駆除が行われました。
 この間、脇野沢村村長が、現在野猿公苑で飼育している約60頭のA1群全頭を京都大学霊長類研究所の繁殖コロニーへ譲渡し、その空いた施設に今回捕獲する24頭を収容する、駆除回避のための方策を関係諸機関と折衝していたのですが、結局折り合いがつかず当初の捕獲駆除となりました。

   捕獲数の24頭については、人的被害を与えるサルの数と思われますが、そうではありません。群れの増加率を越えない数で、本来の「ワル」を駆除することとは別のベクトルが働きました。ここにも青森県のビジョンのなさが伺えます。A2-84群から11頭、A2-85群から6頭、ハナレザルから7頭と、群れごとに割り振られました。@被害の軽減に資する個体 A分散など群れへの影響の少ない個体 B捕獲後、群れの生態調査 C捕獲個体の計測などの記録 が捕獲の条件。また、現地での打ち合わせ会議で、赤ん坊ザルや親子ザルは除外することを決定、結局、若者のオスザルを中心に駆除することになりました。

   捕獲の様子については、連日テレビ・新聞で報道されていましたが、朝8:30から夕15:00まで、野猿監視員4、5名が作業を担当。群れの位置を電波発信機で把握し、集落に出没するときに、りんごをエサにした箱ワナで捕獲するものです。私は捕獲された個体が捕獲の条件に見合うサルが否かの審判を任せられました。ただし駆除の最終決断は脇野沢村教育委員会の捕獲担当者が決定しました。

   捕獲駆除した頭数は、13頭。内訳はA2-84群が9頭、A2-85群が3頭、A87群が1頭でした。A87群は今回の捕獲対象外の群れですが、捕獲期間中に九艘泊地区の人家侵入を繰り返していたため、個体を特定し捕獲駆除となったものです。また、当初ハナレザルを7頭捕獲する予定でしたが、申請時にいたオスグループがA2-84群の周辺ザルになっていたため、該当するハナレザルがいなくなっていたため、捕獲数に入らなかったのです。

   駆除数が成果ではありません。薬殺した数を成果とするのは、サルに対する思いやりに欠けますし、すべてのサルを駆除してほしいとする農民への配慮にも欠けます。今回の捕獲駆除の成果は、今後のサルと人との関わり方から明らかになることでしょう。私達は、サルの生態調査を通して今回の捕獲駆除を検証していきます。また、人の野生動物観についても考えていきたいと思っています。

                          松岡史朗


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